不動産相続の共有は避けるべき?問題点や解決策とは
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不動産相続の共有は避けるべき?問題点や解決策とは
不動産の相続を共有して行う場合、様々な問題点があります。もしこれから相続人を指定しようと考えている方は、これらの問題点について知っておくことをおすすめします。
今回は不動産相続の共有を避けた方がよいとされているのかについてご紹介いたします。
■不動産相続の共有で問題となりやすいこと
お金のように簡単に複数に分けることができない不動産。共有名義での相続を選ぶと、様々な問題が発生する可能性があります。
・相続の分配
財産相続は法律で定められた法定相続人である「配偶者・子供(もしくは孫)・父母・兄弟姉妹(もしくは甥姪)」に分配されます。法定相続人は定められた割合の財産を相続することになりますが、不動産の場合には一つの財産の所有権を複数の人で所有することになります。
とはいえ、不動産は簡単に分割できるものではありません。他の財産がなければ不動産を分配するしかないので、共有相続を選ぶというケースが多いのです。
・不動産の共有と権利
土地や建物といった不動産を共有相続した場合は、その所有権を相続人全員が持つことになります。相続した割合に関わらず共有したものを全員が使うことができるという意味なので、別荘や自宅などの財産を共有相続した人はそれぞれが「自分のもの」として使えるのです。
ですが、共有相続した建物を建て替えたり、土地を貸し出したり売却したいと思った時に、共有相続をした全員の同意が必要になります。共有相続をした人の1人でも反対をしたら実行することはできないので、複数で所有権を持つということは簡単なことではないのです。
・不動産相続で共有名義にするデメリット
不動産を共有相続してから年月が経つと、相続人が亡くなるという場合も増えていきます。
共有相続をした人が亡くなると、その財産が故人の法定相続人に分配されます。その結果、一つの不動産を相続する人がどんどん増えていってしまう可能性があるのです。相続する人が増えていくと、その不動産に関しての権利を行使することが難しくなっていきます。
また、建物の場合にはその管理を誰がするのかという問題も出てきます。相続した割合が大きい人が管理するのか、それとも建物に近い場所に住んでいる人がするのか、など共有相続をした人たちの間での意見を擦り合わせる事になるでしょう。お金や手間、心情的な事など様々な要素が絡むため、思わぬトラブルに発展することもあります。
最終的に売却をしてしまおう、という話になった時にも共有相続をしているとスムーズにいかないことが多々あります。特に、相続をした人が代替わりしている場合や住んでいる場所がバラバラの場合には話し合いをするのも簡単なことではありません。また、相続人同士みんな仲が良いとは限らないため、いざ売却をするという時になって大きなトラブルになってしまうこともありえるのです。
■不動産相続で共有名義の場合はどう解決する?
不動産の相続によって残された遺族の間にいさかいが生まれるのは悲しいことです。そうならないために、共有名義で相続した不動産はどうすればいいのでしょうか。
・相続した不動産の扱いについて
不動産を相続した場合には、共有相続以外の手段を選ぶこともできます。トラブルにならないように不動産を相続するためには、法律や遺産相続の専門家を交えて遺産分割協議を行うという方法があります。財産の内容や相続人の希望を元に、3種類の不動産を分割する手段の中から最適な方法を選ぶのです。
不動産以外に現金などの財産がある場合には、不動産を分割することなく分配する「現物分割」。財産が不動産だけの場合には相続した人が相続していない人にお金を支払う「代償分割」。そして最後の1つは、不動産を売却してそのお金を分割する「換価分割」です。
・相続後にすぐ売却するのであれば問題ない?
わざわざ協議をしなくてもそのまま共有相続でも問題がないのは、相続後に売却をする予定がある時です。法定相続人全員が納得していて相続後すぐに売却をすれば、そのお金を分配率にしたがって分けるだけなので問題も起こりにくくスムーズです。この際にも、途中で誰かの意見が変わってしまうと売却することができなくなってしまうので、トラブルにならないように早めに行動するのがおすすめです。
■不動産相続の共有名義にもメリットはある?
デメリットが多いように思える共有名義での不動産相続ですが、問題点ばかりではありません。
・公平性が高い
相続したのが不動産と現金だった場合に「現物分割」をすると、不動産の価値と現金の額に差がある場合には公平とは言い難い状況になってしまいます。
その点、不動産を共有相続にすると、不平等になることなく相続人が財産を受け取ることができるため、共有相続を選ぶケースは少なくありません。
・費用がかからない
不動産相続の共有が選ばれる理由として「費用がかからないから」というメリットが挙げられます。
相続した不動産の移転登記を代表者の名前で行う際、登録免許税が必要になります。
ですが、所有権の移転登記に義務はないので、共有者の同意を得ている場合は移転登記をしなくても問題ありません。つまり、共有相続を選んだ場合、登録免許税の必要がなくなるのです。
※(注記)政府は、2021年3月5日に2023年相続登記の義務化施行に向け、民法・不動産登記法の改正案を閣議決定しました。
不動産の共有相続は相続人が平等に財産を相続できる手段です。しかし、時間が経ってから共有相続をしたことによるデメリットが現れて、結局そのまま放置してしまう...というケースは少なくないです。現物分割や換価分割、代償分割など不動産を分配する方法は色々あります。先々のことまで考えて、納得できる相続の手段を選びましょう。
※本コラムの内容は令和3年3月24日現在の法令等にもとづいております。年度の途中に新税制が成立した場合や、税制等が変更されるケースもありますのでご了承ください。 また、詳細について知りたい方は、お近くの税務署や税理士などにご確認ください。