【不動産の減価償却】不動産売却時の取り扱いで必要になるケースや計算方法について
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不動産コラム
【不動産の減価償却】不動産売却時の取り扱いで必要になるケースや計算方法について
不動産を売却する際には減価償却が必要になります。
今回は減価償却の考え方や必要になるケース、減価償却費の計算に必要な項目などについてご案内いたします。
■不動産の減価償却
決まり事が多い減価償却について、まずは、減価償却の基礎知識と不動産売却にどう関わるのかを確認しておきましょう。
・減価償却とは
減価償却とは、時間の経過とともに減っていく固定資産の価値を、耐用年数に応じて費用として計上することです。対象に当てはまる資産には、建物や建物附属設備、器具備品、車両運搬具、機械装置などがあります。
・不動産の減価償却とは
不動産の場合、減価償却されるのは建物で、建物減価償却費として計上されます。経年による価値の変動がない土地には行われません。
・不動産の減価償却が必要になるケース
不動産の減価償却は、会計業務で費用計上するときや、建物を含む不動産売却時の譲渡所得を計算するときに必要になります。
<譲渡所得とは>
譲渡所得とは不動産の売却で生じた所得のことで、売却代金から取得費と譲渡費用を引いた残額を指します。取得費を計算する際は、経年による価値の低下を反映させるため、所有期間中の減価償却費相当額を差し引かなければいけません。
■減価償却の計算
減価償却は対象となる建物が使われ始めた時期から計算されます。計算の仕方や注意点、必要な項目などは以下の通りです。
・減価償却費の計算
計算方法は定額法と定率法の2通りあります。
<定額法と定率法>
定額法は、取得価額に一定の償却率をかけて毎年同じ額の減価償却費を計上します。
取得価額 × 定額法の償却率
定率法は、減価償却費の累計額を取得価額から引いた後、定率法の償却率をかけて算出します。償却費の額がはじめは高く、年とともに減少するといった特徴があります。
(取得価額-前年度までの償却費の総額)× 定率法の償却率
なお、償却保証額に満たなくなった年分以後は、定額の減価償却になります。
改定取得価額×改定償却率
・不動産の減価償却費の計算での注意点
2007年(平成19年)の法改正によって建物の償却方法に変更がありました。
2007年(平成19年)4月1日以後に取得をされた建物は定額法、1998年(平成10年)4月1日~2007年(平成19年)3月31日までの取得では旧定額法が適用されます。
なお、(1998年)平成10年3月31日以前に取得をされたものは取得当時に選択した旧定額法か旧定率法のどちらかになり、2012年(平成24年)4月に定率法のみが再改正されています。
・不動産の減価償却計算に必要な項目
<建物の取得価格>
建物の取得価格は、購入代金・建築代金の他、購入手数料や登録免許税、土地の測量費など取得の際にかかった費用の合計となります。ただし、事業所得などの必要経費に算入されたものは含めません。
建物を土地とセットで購入し、建物のみの取得額がわからない場合は、土地に消費税がかからないことを利用して、支払った消費税の金額から逆算するという方法があります。
<耐用年数>
耐用年数とは、固定資産が利用に耐える期間として法的に定められた年数です。建物の法定耐用年数は、構造によって5種類に分けられ、さらに事務所用、飲食店用などに細分化されています。
<建物の法定耐用年数 一例>
【木造・合成樹脂造】 事24年 店・住22年 飲20年
【木骨モルタル造】 事22年 店・住20年 飲19年
【鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造】
事50年 店・宅47年 飲34~41年
【れんが造・石造・ブロック造】 事41年 店・宅38年 飲38年
【金属造】 事22~38年 店・宅19~34年 飲19~31年
※事:事務所用、店・住:店舗・住宅用、飲:飲食店用
<償却率>
償却率は、「定額法償却率」と「定率法償却率」があります。どちらも取得時期が2007年(平成19年)3月31日以前か2007年(平成19年)4月1日以後によって償却率が変わるので注意が必要です。
償却率の具体的な数字は、国税庁が公表している「減価償却資産の償却率表」から耐用年数に応じたものを使用します。
■減価償却シミュレーション
上記の減価償却費の計算方法を木造と鉄筋コンクリート(RC)造でシミュレーションしてみましょう。
・木造の減価償却
2020年(令和2年)4月に3,000万円で新築した住宅用木造家屋の場合、木造なので耐用年数は22年となります。2007年(平成19年)4月1日以後の取得なので、減価償却資産の償却率表の「定額法償却率」欄から22年の償却率(0.046)を取得します。
よって、減価償却費は以下のとおりとなります。
建物取得額 3,000万円 × 0.046 = 138万円
・鉄筋コンクリート(RC)造の減価償却
上記と同じように2020年(令和2年)4月に3,000万円で新築した住宅用家屋でも、鉄筋コンクリート(RC)造の場合は、耐用年数は47年となり、償却率(0.022)も半分以下になります。
よって、減価償却費は以下のとおりとなります。
建物取得額 3,000万円 × 0.022 = 66万円
今回は不動産の減価償却の計算をするために必要な項目や注意点などについてご紹介しました。不動産は金額が大きいだけに、自分で算出した額が合っているのか不安になってしまいます。そんな時は、不動産の専門家の助けを借りて実際の金額を割り出してみましょう。
本コラムの内容は令和3年1月7日現在の法令等にもとづいております。年度の途中に新税制が成立した場合や、税制等が変更されるケースもありますのでご了承ください。また、詳細について知りたい方は、お近くの税務署や税理士などにご確認ください。