【不動産の生前贈与】相続との違いや発生するケース、課税方式について
コラム
不動産コラム
【不動産の生前贈与】相続との違いや発生するケース、課税方式について
生前贈与を知っていますか。
生前贈与とは、所有する財産を存命中に子や孫に譲り渡すことをいいますが、譲り受ける側には贈与税が発生します。特に、不動産を譲り受ける場合はトラブルを避けるために仕組みなどを事前に知っておくことが必要です。
今回は不動産を譲り受けた際の贈与税や発生するケースなどについてご案内いたします。
■不動産の生前贈与
不動産の生前贈与について、まずは相続と生前贈与の違いや、生前贈与のメリットを確認しておきましょう。
・相続と生前贈与の違い
相続とは亡くなった方の所有していた不動産や預貯金などの財産を引き継ぐことです。相続人には相続税が発生することがあります。
一方、生前贈与は持ち主が所有している財産を生きているうちに贈ることで、贈られた側には金額や一定の要件によって贈与税が課せられます。
・生前贈与のメリット
生前贈与のメリットは制度を上手に利用すれば、節税ができる、あるいは相続税を納めるのに必要な現金の準備ができる、などがあげられます。
■贈与税とは
メリットの多い生前贈与ですが、それによって発生する贈与税の課税方式や、発生するケースなどを知っておくと活用しやすくなります。
・贈与税とは
贈与税は、不動産や現金などの財産を個人からもらった際にかかる税金です。財産を贈る個人を「贈与者」、贈られた側を「受贈者」と呼ばれ、納税義務が課せられるのは受贈者です。
贈与税は他にも、自ら保険料を負担していない保険から生命保険金を受け取った場合、未払金、借入金といった債務を免除されたときなどでも発生します。
・贈与税の課税方式
贈与税の課税は原則「暦年課税制度」で行われますが、一定の条件下では「相続時精算課税制度」が選択できます。
<暦年課税>
暦年とは1月1日から12月31日を指す言葉です。暦年課税制度では、その1年間の贈与の合計額から基礎控除(110万円)を引いた額に10%~55%の税率をかけて贈与税を算出します。基礎控除後の額がマイナスであれば贈与税は発生しません。なお、贈与された財産が不動産の場合は別途、不動産取得税がかかります。
注意点として、2人以上贈与者がいても控除額は110万円のままであることが挙げられます。
<相続時精算課税>
贈与の年の1月1日時点において、財産の贈与者が60歳以上の父母や祖父母などで、受贈者が20歳以上、かつ、贈与者の推定相続人かまたは孫の場合、相続時精算課税を選択することができます。
相続時精算課税制度では、贈与の合計額から特別控除(最高2,500万円)を引いた課税金額に20%の税率をかけて贈与税を算出します。相続時精算課税制度を選択すると、控除された分は相続時に精算されるため、贈与税が発生しなくても確定申告が必要です。
贈与者が亡くなると贈与された財産は相続する財産に加算して相続税を計算しなくてはなりません。また、相続時精算課税を利用すると暦年課税を利用することはできず、年間110万円の控除は適用されなくなります。
・贈与税が発生するケース
贈与税が発生するケースを具体的にみていきましょう。
<名義変更のみ行った>
土地や建物などの不動産を無償で受け取り、名義変更のみを行った場合は贈与とみなされ、贈与税課税の対象になります。また、有償の場合は不動産の売買となり譲渡所得に所得税・住民税が発生します。
<相場よりも安い値段で買い取った>
土地や建物などの不動産を相場よりも著しく安い値段で買い取ると、贈与税課税の対象となります。贈与と同じような経済的利益を受け取ることになるためです。
<住宅ローンと一緒に贈与された>
住宅を住宅ローンとともに贈与された場合、住宅の価格と住宅ローン残高の差額に贈与税が課せられます。ただし、住宅ローン控除制度も同時に利用できるので納税義務が発生するケースとしないケースがあります。
・生前贈与でトラブルを避けるために注意すること
不動産を生前贈与する場合、口約束だけをして名義変更を済ませてしまうと、相続時に相続人同士でトラブルになることがあります。贈与は贈与者と受贈者の合意によって成立するものなので、その証として必ず贈与契約書を作成しましょう。
■贈与税に控除や特例はある?
生前贈与で発生する贈与税には控除や特例があり、それによる節税効果も期待できます。
・相続税が軽くなるケース
生前贈与によって相続財産を減らすことで相続税が軽くなるケースがあります。一方で生前贈与には贈与税が発生しますが、非課税枠の利用で最終的に納める税金の額を低くすることができます。
<基礎控除(暦年課税の非課税枠)>
贈与税の暦年課税制度では、受贈者1人につき110万円の基礎控除があり、年間110万円以内であれば非課税で子や孫に財産を譲ることができます。なお、個人単位で計算されるので、複数人から贈与を受けると非課税となるのは合計額(110万円以内)です。
<配偶者控除>
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用の不動産や不動産の資金を贈与したときは、基礎控除(110万円)に加えて配偶者控除(2,000万円)が利用できます。配偶者控除を利用した人は、贈与をされた不動産に翌年3月15日までに住んでいなければいけないなどの要件があることに注意しましょう。
<住宅取得等資金贈与の非課税制度>
自分が住むための住宅用家屋を取得するための資金について、父母や祖父母など直系尊属からの贈与には非課税枠があります。受贈者は贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上でなければなりません。非課税となるのは、基準を満たした省エネ等住宅では契約の締結日によって800~3,000万円、それ以外では300~2,500万円です。
<相続時精算課税制度の非課税制度>
相続時精算課税制度の特別控除額は最高で2,500万円です。一度の贈与が2,500万円未満のときは控除額の残高が翌年以降に繰り越される仕組みになっています。
通常、財産の受贈者が60歳以上で利用できる制度ですが、自己用住宅家屋を取得するための資金には特例があり、2021年(令和3年)12月31日までは60歳未満であっても相続時精算課税を選択することができますが、利用できるのは指定相続人である20歳以上の子、または孫であることなど要件があることに注意しましょう。
生前贈与は仕組みを知り、課税方式を正しく理解することで支払う税額を抑えることができます。財産の贈与や相続の前に、一度利用できる制度を調べてみることをおすすめします。
※本コラムの内容は令和3年1月7日現在の法令等にもとづいております。年度の途中に新税制が成立した場合や、税制等が変更されるケースもありますのでご了承ください。また、詳細について知りたい方は、お近くの税務署や税理士などにご確認ください。