不動産の相続時、売却・購入時にかかる税金についてご案内します。
コラム
不動産コラム
不動産の相続時、売却・購入時にかかる税金についてご案内します。
相続した不動産から発生する税金は相続税だけではなく、名義変更や取得、所有にかかる税金が発生します。誰も住まないからと売却、新しい不動産を購入する場合も、各種税金が発生します。
今回は、不動産の税金について、相続時、売却時、購入時の3つに分けてご案内いたします。
■不動産の相続に関する税金
不動産の相続によって相続税などが発生しますが、一連の流れを確認しておくことで手続きをスムーズに行うことができます。
・不動産を相続したらすること
資産を相続する際にまずすべきことは、遺言書があるかどうかの確認です。その上で不動産の相続登記、相続税の納税義務の確認などを行います。
<遺言書の確認>
遺産の相続は亡くなった方(被相続人)の意思を反映させるため、遺言書があれば民法の法定相続よりもそちらが優先されます。遺言書は公正役場で作成される公正証書遺言なら問題ありませんが、手書きの自筆証書遺言の場合、要件が満たせず無効となることもあるので注意が必要です。
<相続登記>
相続による不動産の名義変更手続きを相続登記といいます。遺言書や法定相続などで相続が明らかになった土地や建物などの不動産を相続登記することで、活用・売却などができるようになります。
<相続税の確認>
遺産総額から借金などの債務や葬式費用、非課税財産などを差し引いた金額が、基礎控除額を上回ると相続税が発生します。基礎控除額は法定相続人の人数が増えるほど増額される仕組みになっており、計算式は以下の通りです。
基礎控除額=3,000万円 +法定相続人数 × 600万円
例えば法定相続人が3人いるケースでは、基礎控除額は、
3,000万円 + 3 × 600万円=4,800万円
となり、相続する遺産の総額が4,800万円より高い金額であれば相続税が発生し、低ければ非課税です。
・相続時に発生する税金
不動産相続時は、必要に応じて税務署に納める「相続税」と法務局に納める「登録免許税」が発生します。
<相続税>
基礎控除額を上回る遺産相続で相続税が発生しますが、相続人によっては税金が軽減されたり免除されたりすることがあります。例えば、配偶者は配偶者控除によって1億6,000万円まで、または配偶者の法定相続分相当額までは相続税がかかりません。他にも、未成年者控除、障害者控除などがあります。
<登録免許税>
相続する不動産の名義変更をする際に必要になるのが登録免許税で、計算式は下記の通りです。
登録免許税=不動産の価額 × 0.4%
不動産の価額は、市町村が管理する固定資産課税台帳の価額、または登記官が認定した価額で、一般的に建物なら建築費の50~80%程度、土地なら時価の60~70%になります。
・所有時に発生する税金
相続した不動産を所持し続けることで固定資産税と都市計画税が発生します。
<固定資産税>
固定資産税は、1月1日時点で不動産を所有している人に課せられる地方税で、固定資産の所在する市町村(東京23区内は都)に支払います。
<都市計画税>
都市計画税は、都市整備などの費用に充てるための目的税で、主に都市計画法による市街化区域内に1月1日時点で不動産を所有している人に課せられます。
<譲渡所得税>
譲渡所得税は不動産の売却や譲渡の際に課税されますので、所有している段階では発生しません。
<住民税>
譲渡所得税と同じく、不動産の売却や譲渡の際に課税されます。
・不動産の相続時に注意すること
不動産を相続すると他の遺産も一緒に相続することになります。現金や預貯金の他、借入金や未払い金などマイナスの遺産も受け継ぐ可能性があるのでしっかり確認しておきましょう。
また相続税が発生した場合、相続税の申告・納税には相続開始後10ヶ月という期限があり守れないと無申告加算税などが課せられる点にも注意が必要です。
■不動産の売却時に関する税金
不動産の売却時に発生するのは印紙税と消費税です。場合によっては登録免許税や譲渡所得税(所得税、住民税、復興特別税)が発生します。
・印紙税/消費税
印紙税は不動産売買契約書などの課税物件に該当する文書に必要で、印紙を購入・貼付・消印することで納税となります。消費税はこれらの文書を扱う不動産会社の仲介手数料、司法書士に支払う手数料などに発生します。
・名義変更にかかる登録登記税
抵当権が設定されている不動産は売却ができません。そのため、売却時はローンを完済し抵当権を抹消しなければいけませんが、その抹消手続きに登録免許税がかかります。登録免許税は1件につき1,000円、土地と建物を一緒に売却する場合は2件として数えられ、計2,000円の費用が必要です。
・譲渡所得税
売買など不動産の譲渡で利益が出ると譲渡所得となり、譲渡所得に対して所得税・住民税・復興特別所得税(※)が課せられますが、これらの税金を総称して譲渡所得税と呼ぶことがあります。利益が3,000万円以下の場合などで控除特例が利用できます。
(※)復興特別所得税のみ、2013年から令和19年となる2037年までの25年間実施。
・相続した不動産を売却するタイミング
相続した不動産は所有し続けると維持費がかさむため、不動産を活用しない場合は早めに処分した方がいいでしょう。特に相続税が発生している場合は、取得費加算の特例の適用を受けられる3年以内に売却するのがベストです。
・土地の売却後には確定申告が必要
土地など不動産を売却したときに利益が生じた場合は、売却した年の翌年2月中旬から3月中旬までの間に確定申告を行います。なお、売却益が出ないときは申告の義務はありませんが、税制上の特例の適用を受けようとするときは申告が必要です。
■不動産の購入時に関する税金
不動産の購入時にも各種税金の納税義務があります。
・消費税
土地は非課税ですが、建物の購入、新築、不動産仲介手数料、各種手続きの代行手数料、住宅ローンの手数料などに消費税がかかります。ただし、建物の売主が不動産会社や建築会社ではなく個人の場合は非課税です。
・印紙税
不動産の売却時と同様に購入時にも不動産売買契約書などに印紙税が必要です。
・登録免許税
不動産を購入すると土地や建物の登記が必要です。登記にかかる税金を登録免許税といいます。登録免許税は、2020年度(令和2年)の税制改正により税率の軽減措置適用期限が2022年(令和4年)3月31日まで延長されました。
・不動産取得税
有償、無償にかかわらず不動産を取得したときは不動産取得税を納めなければいけません。一定の要件を満たすと軽減措置が受けられます。
・相続した不動産の売却と新しい不動産の購入はどちらが先?
相続した不動産の売却と新しい不動産の購入は、どちらを先行させてもメリット・デメリットがあります。そのため、不動産会社などでは同時進行するのが良いと考えるところが多いです。
不動産の相続、売却・購入には様々な税金がかかりますが、きちんと対処すれば難しいものではありません。困ったときや分からないときはプロに相談し、適切な対処を行いましょう。
※本コラムの内容は令和3年1月7日現在の法令等にもとづいております。年度の途中に新税制が成立した場合や、税制等が変更されるケースもありますのでご了承ください。また、詳細について知りたい方は、お近くの税務署や税理士などにご確認ください。