相続の流れとは?亡くなってからやるべきこと
コラム
不動産コラム
親や家族が亡くなると、気持ちの整理も付かないうちに、残された人は様々なやるべきことが出てきます。
そのうちの一つが相続に向けた手続きです。
今回は被相続人(相続財産を遺して亡くなった方)が亡くなった場合の、相続に向けたその後の手続き、やるべきことを説明していきます。
亡くなってから3か月以内にやるべき相続の手続き
気持ちの整理がつかず、もっとも忙しい時期にはなりますが、相続の手続きとして進めておくべきことを紹介します。
・死亡届の提出
被相続人の死亡を知った日から7日以内に死亡届の提出を行います。
・通夜、葬儀
葬儀関連の領収証類は必ず取得しておきましょう。
・遺言書の有無の確認
最期まで一緒に生活されていた人が知っている可能性があります。
遺言書が見つかった場合、勝手に開封しないで、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「遺言書検認」の申立をしてください。
公正証書遺言の場合、公証役場で検索することができますので、問い合わせてください。
・遺産、債務の把握
相続税申告が必要な財産をもっているか、逆に相続放棄を検討しなければならない状況かという確認をする必要があります。
・相続人の確認
誰が相続人であるかを確認します。
具体的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類(除籍謄本、改製原戸籍、全部事項証明書など)をすべてそろえることになります。
戸籍謄本類の取得方法は、被相続人の本籍地所在の役所に問い合わせてください。
また、途中で転籍や婚姻などで本籍地が変わっている場合、それぞれの役所から取り寄せる必要が出てきます。
相続人が誰であるかもう分かっているという場合にも、銀行の手続きや不動産の所有権移転などに必要になります。
・特別代理人の選任(未成年者が相続人の場合)
親の片方が死亡した場合、もう1人の親が未成年者の親権者となります。
しかし、相続にあたっては、配偶者自分自身も相続人であることから、未成年者の代理人となることができません。
その場合、家庭裁判所に「特別代理人」を選任してもらう必要があります。
・相続放棄、限定承認の申述
明らかに相続債務の方が多いなどの理由で、相続を放棄することができます。
その場合、原則として自分が相続人であることを知った時から3か月以内(熟慮期間)に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述する必要があります。
他の相続人に「私はいらないよ」といったとか、遺産分割で自分の相続分を放棄した合意をしたとかいうことは、「相続放棄」にはなりません。
つまりどういうことかというと、後から予想していなかった負債が出てきた時に、「自分は知らない」といえない、ということです。
借金を背負いたくない人は、この3か月の間に「相続放棄の申述」を確実にやっておく必要があります。
3か月経った後に相続債務が見つかった場合
3か月の熟慮期間が過ぎてしまった後に、思わぬ債務が見つかった、または訴えられた、という時でも諦めてはいけません。
プラスもマイナスも含めて、相続財産がまったくないと信じていた場合には、相続財産があると知った日から3か月以内に相続放棄の申述をすることができます。
速やかに、弁護士などに相談して、家庭裁判所に対して相続放棄の申述を行ってください。
ただ、家庭裁判所が相続放棄の申述を受理したからといって、相続放棄が確定的に認められたということを意味するものではありません。
債権者の側は、相続放棄の効力を争うことができます。逆に相続放棄の申述が認められなければ、そもそも相続放棄が認められる余地がなくなってしまいますので、この3か月という期間には注意しましょう。
4か月以内に行うこと
・準確定申告
通常、1月1日から12月31日までの所得について、翌3月15日までに確定申告をする必要があります。
年度途中で亡くなってしまった場合、相続人は、被相続人の確定申告を亡くなったことを知った日から4か月以内にする必要があります。
翌3月15日までではありませんので、注意が必要です。
亡くなってから10か月以内に行う相続の手続き
普段の生活を取り戻し、少し落ち着いてきたころから具体的な相続の手続きが必要になります。
・遺産の調査
相続税の申告に向けてどのような遺産があるかを調査しなければなりません。
被相続人が生前、文書などにまとめてくれていればいいのですが、なかなかそのようなケースばかりではありません。
<預貯金>
特に問題になるのは、預貯金の存在でしょう。
銀行名(できれば支店まで)が分かれば、相続人の身分を証明した上で照会をかけることは可能ですが、見当がつかない場合には苦労します。
生前取引のあった銀行を探るには、通帳やカードなど直接的な資料の他、自宅に来ているハガキや、自宅に置いてあるタオル、カレンダーなど記載から推測できることがあるかもしれません。
また、最近多いのがネット銀行です。
被相続人の過去のメール等を検索することで把握することは不可能ではないとは思いますが、ログインできなければお手上げです。
ネット銀行をお持ちの方は、生前にせめて存在そのものを相続人に知らせておかないと、そのまま手つかずになりかねません。
<不動産>
不動産については、登記事項証明書等を取り付けることで調査を行います。
不動産がいくつもある場合は、市町村役場や都税事務所で固定資産課税台帳の取得を行います。
・遺産の評価
次に調査した遺産について、それぞれ評価をしていく必要があります。
原則として、死亡時の時価評価が基準となります。預貯金などについては通常額面をそのまま採用することになりますが、問題となるのは不動産です。
相続税の申告においては、土地については路線価、建物については固定資産税評価額を基準とします。
一般的には、不動産会社に査定をしてもらい、その評価を基準とすることが多いと思います。
・遺産の分配
遺言書がある場合は、原則それに沿って遺言の執行を行います。
遺言書がない場合、相続人の間で遺産分割協議を行う必要があります。
遺産分割協議そのものには期限はありませんが、相続税の申告期限は原則として10か月以内です。
10か月以内に遺産分割協議がまとまっていれば、配偶者特別控除や小規模宅地の特例などがこの段階で受けられ、税制上の優遇が受けられます。
協議がまとまらない場合、遺産分割調停の申立を行い、遺産分割協議を裁判所で行うことになります。
・相続税について
どんな場合でも相続税がかかるかといえばそうではありません。
「基礎控除」といって、相続税がかかる最低基準を下回る遺産しかない場合には、相続税はかかりませんし、そもそも申告の必要もありません。
基礎控除は、次の計算方法で算出します。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 (平成27年1月1日以降に被相続人が死亡した場合)
ここでいう法定相続人には、相続放棄をした人がいた場合でも、放棄がなかったものとして計算します。
また、養子がいる場合、被相続人に実子がいる場合1人まで、実子がいない場合は2人まで法定相続人に含むことになります。
逆に言えば、それ以上養子をとっても相続税対策にはならないということです。
相続税の申告が必要な方は、10か月以内に申告と納税を行う必要があります。
この申告を怠ると、無申告加算税などのペナルティーが課せられたり、本来適用を受けることができた控除の特例が受けられず、税金そのものが高額になってしまうことがありますので注意が必要です。
配偶者に対する特例や小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、申告期限までに遺産分割協議がまとまっている必要があります。
遺産分割が10か月以内に間に合わないという場合は、申告期限内に税務署に対して申告書とともに「申告期限後3年以内の分割見込書」という書面を提出しておけば、当面特例の適用が受けられます。
3年以内に遺産分割がまとまったら、まとまった日の翌日から4か月以内に更正の請求をすることで、払い過ぎの税額の還付を受けることができます。
亡くなってから1年以内に行う相続の手続き
大きな問題のない限り、1年が経過するころには相続に関しての手続きも完了していることがほとんどです。
・遺留分減殺請求
遺言を残していれば、被相続人は自由に相続の処分を行うことができます。
しかし、兄弟を除く相続人には、遺言に記載されていたとしても排除されない権利が認められています。
これを「遺留分」と呼びます。
遺言によって、相続分が減少させられ自分の遺留分が侵害された場合、侵害している相続人に対して、遺留分減殺請求をすることができます。
この請求は、遺留分が侵害されていることを知った日から1年以内に行う必要があります。
相続の問題は、誰に相談したらいい?
相続、と言葉だけは聞いたことがあったとしても、具体的にどのように進めればよいのかなどわからないことも多いかと思います。
そのような相続に関することで行き詰った時には、誰に相談すればよいのでしょうか?
まず、相続税の申告に関しては、税理士に相談するようにしましょう。
ただ、遺産分割そのものについて不満や疑問のある場合や遺留分の侵害がある場合は税理士ではなく、弁護士に相談しましょう。
弁護士には遺産分割について自分の味方としてアドバイスをもらったり、代理人になってもらうことも可能です。
相続の手続きには、期間が決められているものもあります。
面倒だからと言って先延ばしにするのではなく、早めに相談をし、手続きを進めることをおすすめします。